あれはもう三年以上前の、 2009年の 5月 19日。グランドプリンス赤坂で、「長野の酒メッセ in 東京」というイベントがあって、ここで初めて勢正宗という酒を飲んだ。
勢正宗のブースでは、私の知り合いの児玉武也(以下、たけさん)がお手伝いをしていた。やはり、知っている人がいるブースには、当然長居をしてしまいがちで、たけさんにその年の生酒、火入れ酒、一年熟成生酒、一年熟成火入れ酒、普通酒、30年古酒と一通り飲ませていただき、丁寧に解説してもらった。そのときは、味の濃さやコクが印象に残っていた。
その後、たけさんは、大塚で地酒屋こだまという酒屋を開業したが、都内で頻繁に蔵元さんを招いて酒イベントを開催していた。そういうイベントにたまには参加したいのだが、開催地が大塚だったり四谷だったり、神田だったりと、ちょっと遠くで行くのが億劫だった。
8月の 7日に、吉祥寺の LP2というお店で「 丸世酒造店より関康久社長と晋司さんをお迎えして勢正宗を飲む会」が開催された。たけさんが、吉祥寺でそのようなイベントを開催するというのは初めてであるが、吉祥寺は私の家から比較的近い(電車で 50分)ので、どれ、たまにはたけさんの顔でも見に行こうかと思い参加したのであった。
この会では、また丸世酒造店の関社長、関晋司さんの酒造りのお話を聞きながら、勢正宗を楽しむことができた。
関社長は、とても気さくで感じのいい人で、私たちの質問にも、ていねいに答えてくれた。
丸世酒造店の酒造りは、日本古来の製法であるもち米四段仕込や、蒸した熱々のもち米をモロミに加える熱掛四段仕込という方法で、もち米の優しい甘みを持つ酒を、ていねいに手作りしている酒蔵である。
熱掛四段仕込は、モロミ工程の最後の方で、熱々のもち米を加えて 8度くらいのモロミの品温を 12度くらいに上昇させるという。すると、そろそろ活動を停止しかけていた酵素や酵母が再度活性化して、酒の味がよくなるらしい。ただし、あまりやりすぎると、メロンが熟成したような酢酸エチルの匂いが出てくるので難しいとのことだ。
関社長は、もち米ということに、こだわりを持たれているのか、将来は、麹米ももち米で作りたいと話されていた。
ところで熱掛四段仕込のモロミを搾ったあとの酒粕は、まだ、もち米のつぶつぶが残っているのだろうと思い、関社長に、酒粕が美味そうですねと聞いたら、酒粕も奈良漬なんかを作ると美味いとのことだ。私は、お赤飯とかおこわが好きなので、その酒粕をそのまま食べてみたくなった。
今回の出品酒としては、次の酒がこの順番で出てきた。
1.大吟醸
2.特別純米酒
3.普通酒のしぼりたて原酒
4.熱掛四段純米の生原酒
5.熱掛四段純米の火入れ原酒
6.大吟醸一年熟成
7.大吟醸二年熟成、
8.熱掛四段純米の生原酒一年熟成
9.熱掛四段純米の火入れ原酒四年熟成
どのお酒も、身体の細胞にやさしく浸み通るような上品な甘みと、力強い味わいがある。特に3.の普通酒がとっても美味い。普通酒と思えないくらい美味い。
8.の熱掛四段純米の生原酒一年熟成もいい。これは、たけさんが自分の店の冷蔵庫に保管してあったもので、非売品である。これは、コクのある苦味があり、飲み終わったあと、両側のほっぺがもう一口飲みたいとおっしゃるくらの美味さ。たとえていうなら、大人のプッチンプリンの味、つまり、あのカラメルのような甘苦味がある。
勢正宗は、一年くらい熟成すると、うまくなるのだなと思った。いや、酒はある程度寝かして取っておかないといい味にならないのか?しかし、買ってくるといつもすぐに飲んでなくなちゃうんだよね。
ところで、 LP2は、地下のお店だが、店内の雰囲気は明るい。気持ちよい晴れの日の木漏れ日をイメージしたという。壁や天井に、杉か何かの丸太を輪切りにしたものが、サルノコシカケのような形で、大量に埋め込まれていて、木の香りがただよう。客席はカウンター席とテーブル席で、特にテーブルは、非直線的な形状のもので自然に近い雰囲気をかもし出している。
料理も一品一品が丁寧に作られており、どれも美味しかった。
下の写真は、先付けの「トマトと枝豆のかつおゼリー寄せ」と前菜の「玉子豆腐 コーンしんじょう
鮎の昆布巻き甘露煮」
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